ソンザイカチ

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時は現代。 個々が独立している社会 自分が大事 自分が一番――… そんな人達で溢れている社会なんて、キライ だから、 そんな社会で笑って生きている人間と仲良くするつもりはない。 私は一人。 哀しくもないし寂しくもない。 だって。 ワタシガヒトリヲノゾンダカラ 肉親はもうとっくの昔に私を置いてどっかいったわ。 私は要らない子だったらしい。 まぁ。家族なんてどうでもいいんだけど、 ただ一人。 あの人だけは違ったの。 捨てられたあと、施設に預けられた私に毎日毎日会いに来てくれた。 その人はいきなり現れていきなり居なくなる。 でも、毎日会いに来てくれた。 私もあの人にだけは心を開けた。 そう言えば…私が施設を出てからもう6年。 ずいぶん会ってないな… どうしているのかしら? 確か、瑠璃錦(ルリカネ)って言っていたような… そんなことを考えながら歩いていると、 「ねぇ、君は奏多ちゃんだよね?」 後ろから私の名前を呼ぶ声 私の名前を知っているのは 『ッ…る、瑠璃錦…さん?』 昔と何一つ変わってない 肩ぐらいまである綺麗な銀髪を結って 現代には似合わない、煙草ではなく煙管をくわえ いつでも深い紫色に彼岸花の刺繍入りの着物。 鮮血のような綺麗な赤色をした瞳。 人間ではないような妖艶な美しさ――… 動作の一つ一つが綺麗で、何だか、引き込まれそうになる。 そんな変わった身なりに私は惹かれたのかもしれない。 「ハハッ、そんなに驚かなくても。久しぶり。急に消えちゃってごめんね……迎えに、来たよ」 なに 意味が解らない。 迎えに来たって? 『…どういう、こと?』 「ごめんね。驚かせちゃって。実は僕、この世界の住民じゃないんだ。別の、ここではない世界の住民なんだ。奏多ちゃんはこの世界が、嫌いなんだよね?」 私は静かに頷いた。 「コホンッ。では、奏多ちゃん。…いや、紫碧様。」 『…しへき?』 「そうだよ。僕達の世界のお姫様の名前。代々紫碧の名を継ぎ、僕の家系と夫婦の契りを結ぶことになっている。ちなみに僕は、国を治める皇帝の息子。」 皇帝の息子…瑠璃錦さんは王子様なんだ… でも、なんで異世界の私が選ばれたわけ?
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