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ヘンクツじいさんの家は
ホンダラ叔父さんの家のすぐ脇の階段を降りて地下道を通って抜けたところにある。
(こんなところがあったなんて、なんで今まで気がつかなかったんだろう)
アルスは地下道を抜け出口に着いた。
抜けるとざざーっと
海の波の音が聞こえた。
それは崖っぷちに建っていた。
下には海が広がっている。青い屋根の家だ。
アルスは恐る恐る扉をノックした。
「コンコン」
・・・・・・・・・・・・・・
返事がない。ヘンクツじいさんは今、留守なのだろうか?
「おじゃましま~す・・・」扉を開けるとギギギッと音がした。
中には誰もいなかった。
灯りはついていないが窓から日の光が差し込んでいて薄暗かった。
ふと奥に目をやると
地下に降りる階段があった。
アルスは唾を飲み込むと
暗い階段をゆっくり降りていった。
階段の横脇の壁に燭台がついていてかろうじて階段が見えた。
階段を最後まで降りきると奥の方から人の声が聞こえた。
声のする方に行くとたくさんの本棚に囲まれ、真ん中に1つ机があった。
その机には1人の老人が座っていた。
たくさんの分厚い本が並べてあった。
その老人は
「違う、これはこうじゃない」
などとぶつぶつ呟きながら頭をかかえていた。
「あの~」
「これはこうなのか?いや、もしかすると」
老人はアルスの呼び掛けには気づいていないのか本から目をそらさない。
「あの~!」
「なんじゃっ!さっきからでかい声だしおって。聞こえとるわい!」
老人はアルスのほうにバッと振り向き睨みながら言った。
アルスは怖さのあまり固まった。
「わしはいそがしいんじゃ。さっさと帰れ・・・おぬし、手になにを持っている?」
老人の目が急に変わった。珍しいものを見つけたと言わんばかりに輝いていた。「え、えっと。こ、これで、ですか?」
さっきの迫力に押され、上手く話せなかった。
アルスは両手に分厚い古文書を持っていた。
それを老人に手渡した。
老人は古文書を受け取ると老眼鏡をかけた。
「あ、あの。あなたがヘンクツじいさんですか?」
「そう呼ばれとるのお。お前さん、この本を解読してほしかったんじゃろ?」
「はい‼」
「解読してやろう。じゃが、少し時間をくれ。また後で来てくれ」
老人はそれだけ言うとアルスから目をそらし、古文書に目をやり、またぶつぶつ言い出した。
(さて、キーファに、このことを伝えてくるか)
アルスはありがとうございますと言って城下町に戻った。
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