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砂漠の国ガレバーシャ城下町の、宿屋での出来事である。
聖都ラータからの珍客は、とにかく不満で一杯だった。
「ああ、嫌だわ。何でこの私が、わざわざこんな砂だらけの国を訪ねなきゃならないのよ」
「未来の王妃様が何をおっしゃいま……」
「あら、解らないわよ」
「お嬢様ぁ~!」
「いい加減にしないか、エメラ」
しばらく娘と老執事のやりとりを背後から眺めていた壮年が、娘を叱り付けた。
「……お父様」
「もう決まった事だ。お前も納得してここまで来た筈だろう」
「…………」
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