三月のある日

3/6
前へ
/6ページ
次へ
ご満足なF-049はあとからぴこぴこ付いてくるから気にしないで部屋に戻る。ちなみに部屋は三人部屋で、まだ起きてない窓側のベットの丸い塊のやつがノツキ。なんて字を書くか知らないから、心持ちカタカナ表記で。まぁF-049が呼べば誰でもカタカナなんだけど。話す言葉にそんなのあるのかってやつは置いといて。 「じゃー、暇だし何かする?」ぼすっと椅子に座って側にきたカタカナ製造マシーン(特許出願中)に訊く。「るるるるる」「了解、お絵かきね」ひゃくぱーせんてーじ要望を行動で読みとって差しだされたスケッチブックとシャーペンを受けとる。開いてまだ書かれていないベージを探して、一枚切り取りF-049に渡す。 「さーて何書こう」自慢じゃないがお姉さん絵だけには自信あるのさ!一度なんか窓から見えた梅の木を模写して、『私のお友達』ってタイトルの子供向けの絵の大会で入賞したんだよ。その時はまだノツキが来てなかったから、F-049書いたんだっけな。梅はどこいった梅は。 若き思い出の沼にズブズブと沈みつつ、スケッチブックにペンを滑らせて線を描く。大雑把に輪郭をとって目鼻立ちをつけて、すんなりとした首と肩を描く。隣でふんふん鼻歌交じりのF-049のを覗いたら、「ファイセント・ファン・ゴッホのひまわり?」「るるるるれる!」すごく……大きいです。阿部さん違くて、絵。床はみ出してるから。「あー、クレヨン落ちにくいのに」まぁ、ノツキはわりあい芸術的感性のあるやつだから許してくれるだろう、きっと。床に大輪のひまわりが咲きみだれるなんて結構じゃないか、なかなか上手いし。流石F-049。器用貧乏の典型的な感じ。欠けてる所の穴は凄まじいけど才能豊か。 「よし、書けた。どーだ、ペンギンの絵」和やかにペンギンが氷の上でティータイム。ペンギン足短いのに足を組んだ構図にしようとして、悪戦苦闘しました。結果、足を無くして落ち着いた。「やっぱり人生バランスだよね」「るりるるるー」よしよしされた。うん、悲しい。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加