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【第一章…空襲】
三郎は昼間学校のグランドで遊び過ぎたのか今夜は早目に眠りについた、何時間位寝たのか解らない、遥か彼方からサイレンの音が耳に伝わって来る、その音は徐々に大きく聞こえて来る、ふと目を覚ますと部屋の中が騒々しく、ドタバタと人が行き交う物音がする
「早く起きろッ」
と怒鳴るオジさんの声がする、甲高いオバちゃんの声が耳の中に突き刺さる、はっきりと目を開けると空襲警報処かもう寝ている真上はB-29が編隊を組んで、その轟音を響かせていた
急いで起き上がり、弟の五郎と奈々子、八重子、久美子の毛布を剥ぎ捨てて、素早く身支度をさせたが、妹達の身仕度を待っている程余裕はなかった、オバちゃんの
「早く逃げろ!」
の声に寝巻きのままの久美子もそのままの姿で表に飛び出した、
上空を見上げると、もの凄い轟音をたててB-29爆撃機が焼夷弾を落下させている、街の方角を眺めるともう昼間の様に明るく、真っ赤な火が轟々と唸り声をあげて燃えている
7才の久美子を背負い10歳の八重子の手を握って
「さあ行くぞ!」
と一声掛けて、一かバチか走り出した
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