夏曜日

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『テーブルの上にあるじゃない。あ、はい。雪江のお弁当』  テーブルにある私のお弁当を取って急いで玄関へと向かった。これもそんな珍しい事じゃない。むしろ普通だったりする。 『あ、お姉ちゃん!これおばあちゃんに渡してだって、お母さんが』  雪江は私に柿が6つくらい入った袋を渡した。正直言って柿をかごに入れながら学校行くなんて嫌だけど、おばあちゃんからは結構お小遣ピンチの時によく助けてくれたからまぁ良しとするか。 『行ってきまーす!』  私は雪江よりも先に自転車に乗って学校へと向かった。この町は町って言うかむしろ田舎だと思う。緑がたくさんあって、道路がまともなのは町の中心くらい。でも私はこんな町が大好きだったりする。 『………あ、夕也ー!』  やっと夕也に追い付いた。夕也ったら私より遅く出るくせに家と学校が近いからすぐ来れる。いいな~。 『おぅ、いつきか。少しは早く起きて余裕を持って行動したらどうだぁ?』  夕也はクスクス笑いながら言った。人の事言えないくせに…。 『夕也だって人の事言えないでしょー!家と学校が近いからっていつもギリギリまで寝てるくせに。』 『俺は余裕があるから寝てられんだよ。けどおまえはちげぇだろ。』 『うっ……それは…。』 何も言い返せない…。確かに夕也が言ったのは正論だ。返す言葉もない。 『ほら、くだらんこと言ってる間に学校だぜ。先行くな。』 そう言って夕也はスピードを上げ、私を抜き、学校の校門をくぐった。 『薄情者ーー!』 つくづく酷い話しだと思った。せめて『おまえも早く来い』とか色々言葉のかけようがあっただろうに。私はそう思いながら学校の門をくぐって教室へ向かった。
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