止まった『時』

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『…あれ、いつきもう帰んのかよ。』 私達は空き地で話した後、水呑場に言った。 『ごめん、ちょっと用事があるんだ。』 私は自転車に乗り話す。 『夕也と二人かよ。』 『それは俺の言葉だ!』 『とりあえず、また明日!』 私はその場を去るように、自転車をこぎ始める。 『あ、じゃあな!』 『おぅ、またな!』 夕也と真也が手を振り言う。 『あ、夕也ぁ!』 私は夕也にさっき準備室で拾った鈴の片方を夕也に投げた。 『ぅおっと、鈴…?』 夕也は不思議そうに鈴を見る。 『あんた携帯のストラップ欲しかったんでしょ!あげる!』 私は自転車をこぎながら夕也に言った。ほんのちょっとした親切のつもりだった。 『おぅ、ありがとなぁ!』 夕也はニッコリ笑い私に手を振った。いい事はするもんだ。私は自転車をこぎ、空き地を後にした。 『ちょっと遊び過ぎたかなぁ…』 私はそう呟きながら下りの道を自転車で下って行く。いつもなら何も起きずにこの道は終わるはずだった…。            『ニャァァァ!』 『…猫!キャ!』 私は自転車の操縦を誤って道路に出る。転びそうになるが何度も踏み耐え、転ばずに済んだ。 『……あぶな……ッ!』 安心したのもつかの間、目の前から大型トラックが迫っていた。 『ハッ………』 …私はそれを避ける程の余裕はなかった。 まさかと思うけど私…死ぬんだ…実感がわかないや…でも次に目を開けた時には私はこの世にいないんだ…。……死ぬのが怖い…生まれて初めてそう思った…。それ以前に死ぬなんて… 『…嫌だ……嫌だぁぁ!………リン…』 私はそう叫んだ。…私はその瞬間、不思議な感覚に捕われた。上も下も右、左…全ての感覚がわからない…。私は…死んだ…?
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