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男性が息を弾ませドアを開けた。まどかに近づきその手を握ると、まどかは弱々しく目を開け男性を見て微笑んだ。
「嘉人……来てくれたのね…ありがとう」
まどかはひとつひとつの言葉を口から絞り出し小さな声で言った。
一度辛そうに目を閉じたが、数回息を整えるとまた目をあけ目の前の男性を真っ直ぐに見つめ直した。
「ごめん…ね、先に行くわ。でもずっと…一緒よ……。この…手を……、この手を……離さないで……ね。……絶対…よ」
男性が手に力を入れ握ると、まどかも弱々しい力で握り返してにっこり笑った。
「嬉しい……わ。ずっと待ってる……から…ね」
青白かった頬に少しだけ赤みがさしたように見えた後、まどかは静かに目を閉じた。
握っていた手から力が抜けると同時に、心拍0を告げる警告音が部屋に響き渡った。
来客があると言われて一階の受付へ行くと、ロビーの奥の椅子に座っている女性のところへ案内された。見たことのない中年女性。しかしどこか見覚えのある顔立ちだった。
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