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敬太郎は公園に着くと、剣玉をベンチの上にそっと置いてから、早速ゴミ拾いを始めました。いつもは少し遊んでから、帰りがけにゴミを拾うのですが、その日は、先にゴミ拾いを始めました。敬太郎はやる事をやってから、落ち着いて剣玉の練習をするつもりでいたのです。
ポテトチップスの袋、ジュースの空き缶、丸められたレシート。毎日の様にゴミを拾っていても、必ずゴミは落ちています。
おにぎりの包装紙をビニール袋に入れている時、敬太郎のすぐ後ろで、誰かの声がしました。
「おいっ、みんな。こいつゴミを拾っているぞ」
「えっ、何それ」
他の声がして、何人かが駆け寄って来る足音が聞こえました。敬太郎が振り返ると、高学年生のお兄さん達が四人、敬太郎を覗き込む様に立っていました。敬太郎は怖くて、今にも泣き出しそうな顔をしています。
「こいつ、乞食だぜ。ゴミを持って帰って食うんだぜ」
「わっ、汚ねえ」
敬太郎の体がガクガクと震え始めました。
「おいっ、こんな所に剣玉があるぞ」
四人のうちの一人が、ベンチの上の剣玉を見つけました。
「俺、剣玉が欲しかったんだ」
そのお兄さんが剣玉を手に取りました。
「わっ、やめろ。それは僕んだ」
敬太郎は大声でそう言うと、手に持っていたゴミ袋を投げつけながら、そのお兄さんに突進しました。お兄さんはそれをスルリと避けると
「嘘付くな。乞食のおまえが、こんなの持ってる訳無いだろ。これは俺が見つけたんだから俺んだ」
敬太郎は
「わーっ」
と大声で叫びながら、もう一度、頭から突っ込んで行きました。今度はお兄さんのお腹に、敬太郎の頭突きが命中しました。
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