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「ぐえっ」
お兄さんは、 変な声を出して後ろに倒れてしまいました。
「こいつ、乞食のくせにふざけやがって」
お兄さんは、もの凄く恐い顔をして立ち上がりました。
「それはパパから僕が貰ったんだ。僕んだ。返せっ」
敬太郎は目に涙をいっぱいためて、大声で叫んで言いました。お兄さんは二、三歩駆け寄って敬太郎の胸倉を掴むと、もう一方の腕を振り上げました。その時
「おい、おまえら何してるっ」
敬太郎から、10メートル程離れた所から低い声がしました。
「やばい、逃げるぞ」
誰かがそう言うと、敬太郎の胸倉を掴んでいたお兄さんは
「覚えてろよっ」
持っていた剣玉を叩きつけて、敬太郎を突き飛ばしました。敬太郎は後ろに倒れて尻餅を付いてしまいました。もう少しで、頭を地面に打ちつけてしまいそうな勢いです。
四人が逃げて行ってしまうと、低い声の主が近づいて来ました。
「おい、坊主、大丈夫か?」
そう言いながら、敬太郎の前にそっとしゃがみ込みました。さっきの四人組のお兄さん達よりも、もう少し年上のようです。
「ケガは無いか?」
敬太郎のお尻の土を叩き落としながら、優しく言いました。敬太郎は膝がガクガクして、少し震えています。小さな声で
「うん。大丈夫」
そう言うのがやっとでした。
その時、公園の入り口の方から
「敬ちゃんっ」
ママの呼ぶ声が聞こえました。
「えっ?」
お兄さんが、驚いた顔をしています。
「おまえも敬ちゃんって言うのか?」
「うん。敬太郎」
小さな声で答えます。
「そうか、それで『敬ちゃん』か。俺は敬二。だから俺も『敬ちゃん』。ほら、ママが呼んでいるぞ。剣玉忘れるなよ。それと、喧嘩するなら負けるなよ。じゃあなっ」
お兄さんはそう言うと、少し足早に言ってしまいました。
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