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「ママーっ、袋ちょうだい」
「はーい」
ママはスーパーのビニール袋を渡しながら言いました。
「また、ボランティアに行くの?全く、変な子ねえ。公園のゴミを拾って、綺麗にするのはとても良い事だけどね。その調子で自分のおもちゃも、お片づけしてね」
男の子はニコッと笑いながら
「行って来まーす」
と言って、公園へ出掛けて行きました。
男の子の名前は敬太郎。小学校の一年生で、もうすぐ七歳になります。公園に出掛けると言ってもその公園は、玄関を出て通りを一本渡るだけです。昔からある古い児童公園で、いつも三~四人の子供達が遊んでいるだけです。遊具も古くて、随分錆び付いてしまっています。
敬太郎は、夕方になると、公園にゴミを拾いに行くのです。週に4~5回、ビニール袋を持って出掛けては、30分位で帰って来ます。ママはそれを『ボランティア』と呼んでいます。そして、その『ボランティア』は、もう一ヶ月近くも続いているのです。
その日も30分位で、敬太郎は帰って来ました。
「ただいま」
玄関に迎えに出てきたママが尋ねました。
「どうしたの?元気ないわねえ」
「今日も来な……」
敬太郎は小さな声で言いかけて
「うんうん、何ともないよ。僕、お腹がペコペコ。今日の御飯はなあに?」
と、返事を誤魔化す様にママに尋ねました。
「今日は、パパが出張から帰って来るから、二人の大好きな鰹のたたきよ。それよりも、本当に何ともないの?ママに何か隠していないでしょうね?」
「何ともないって。僕、手を洗ってくる。これ捨てておいてね」
敬太郎は、ビニール袋をママに渡すと
「わーい、鰹だあ。パパも喜ぶぞぉ」
そう言って洗面所の方へ走って行ってしまいました。
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