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「敬太郎、お家に帰って開けたら良いのに」
二人は公園のベンチに寄り添って腰を下ろしました。
「うんうん。だって来るかも……」
「えっ誰かと待ち合わせしているのか?」
敬太郎は、それに答えずに
「わーい、何だろう。ドキドキするぅ」
と言いながら、袋を覗き込みました。と同時に
「やったーっ。パパ、ありがとう」
そう言って袋から取り出したのは、真赤な玉の剣玉です。敬太郎は剣玉を乗せた手を顔の前でゆっくりと回して見ています。
「パパ、綺麗な剣玉だねえ」
と言いながら、ニコニコしています。真赤に塗られた玉はピカピカに光り、剣や皿の部分は滑らかなカーブを描いています。
「あっ、同じシールだ」
敬太郎は、剣の一番太い所に貼ってある金色のシールに気付きました。漢字で『日本けん玉協会』と書かれた丸いシールです。一年生の敬太郎には、まだ全部は読めないけれど、見たことのあるシールのようです。パパは
「同じって、お友達の剣玉とかい?」
と尋ねました。敬太郎は
「うんうん、おじい……」
そう言いかけてから、慌てて言い直しました。
「うん、そうそう。お友達の剣玉にも同じシールが貼ってあったよ。ねえ、早く帰ってママにもこの剣玉を見せてあげようよ」
敬太郎は剣玉を紙袋に戻すと
「パパ、そのゴミ袋持って来てね」
と言って、飛び跳ねるように、お家に走って行きました。
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