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腕に感じていたのは、冷たい木の温度だった。
高木雅人は、目を覚ました。椅子に座りテーブルに突っ伏した状態で寝ていたようで、まだ若いのにも関わらず、木目の跡がくっきりと腕に残っていた。
頭はすっきりしていたが、このダイニングのような場所が一体どこなのか、高木には見覚えがなかった。
夜にも関わらず部屋は電気が付いておらず、やっと自分が深刻な事態に居ることに気付く。
一体どういうことか。誘拐か。ここは誰の家なのか。
まるで分からない。
高木に分かるのは、自分は今日学校から帰宅し、いつも通りに、自分の部屋に居たはずだということ。
記憶喪失にでもなったのか、という不安がないわけでもない。頭は寝起きのわりにはきちんと働いているが、どうも思い出せないことがあるような気がしてならない。
カツ カツ
ヒールの高い靴で歩く音がして、高木は思わず体を強張らせた。隠れるべきなのか、どうするべきか考えがまとまらない内に、部屋のドアが開けられた。
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