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リビング。 9人全員が、ただ黙って座っていた。 「……もう一度手紙を読んでみましょうよ。遠藤は助かったんじゃないの?」 全員を慰めるように、佐々木は優しい低めの声で言った。 手紙を最後に持っていたのは高木だった。無意識にポケットに入れていたようで、慌てて取り出す。 高木はもう一度声に出して、確認した。 「親愛なる紳士淑女の皆様。 ハートの女王の城へようこそ。 そう、ここはあの有名な『不思議の国のアリス』の舞台です。 え?イメージと違う? それは勿論、ここがアリスの夢の中ですから。 夢というのは曖昧で、アリスのイメージひとつで決まってしまうわけです。 誰かのイメージとアリスのイメージが違ってもおかしくはありません。 さて、この館はアリスの夢の中。 あなた方は、夢の世界の住人。 アリスが目を覚ますと……あなた方は、消えてしまいます! さあ、急いで。 アリスが起きる前に、この夢である館から脱出するのです。 あなた方10人の中に、アリス本人は紛れ込んでいます。 アリス捜しをするのも、何らかのヒントになるかもしれませんからそれも結構。 しかし、自分が夢を見ていることを自覚したアリスが、どういう行動に出るか……? さあ、タイムリミットは今夜一晩ですよ。 僕も急がなくては……。 全ては、ハートの女王の為に。」 「夢である館から脱出……か。遠藤はそれが出来たんじゃないのか……?」 嵐山は独り言のように呟いた。 「アリス誰やねん、もう!!」 西沢はパニックを起こしそうな声で叫んだ。 遠藤に最後に名前を呼ばれたことで、ショックが大きいのかもしれない。 「……遠藤さんだけ、鍵が開けられた。どうしてかしら」 八木は冷静にそう言った。 「まるで、アリスに、夢から外されたみたいだね」 田中うたが発言し、一同の視線が集中した。
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