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「設定やなしに、ほんまにそうやと皆思ってるんか?あっは、は、つまり、俺らはみんなニセモンやと?夢の世界の住人?俺はホンモンやで、西沢彰本人や!!」 「本人の意識だ!!」 叫んだのは高木だった。周りが驚いて高木を見る。 「ここに居るのは、皆本人、或は本人の意識ですよ。俺自身そう感じてるし、間違いない。だから夢の中であまりに勝手な行動をとった遠藤さんが、追い出されたんです。皆、アリスの夢の中に意識を連れて来られたんですよ」 これは、夢だ。 高木は、後悔した。認めてしまった。断言してしまった。 これは現実ではなく、夢なのだと。 高木の頭に、この館が崩れ出すイメージが湧いた。夢の壊れるイメージ。 「……!!」 高木は思わず目を閉じた。 しかし、何も起こらなかった。 「嘘やろ、高木君……皆は?皆もこれが夢やいうんか?そんなアホなことが起きてると……」 「私は思ってる。高木さんと同じ意見」 田中うたが賛同した。 「私も、最初からそう言ってるわ……」 宇都木も賛同した。 「わ、私は分からない……分からなくなってきた……遠藤は消えるし……」 佐々木の意見。 「私……さっき言えなかったけど、これが自分の夢だって自覚すること、良くあるの」 嵐山松子の意見。 「そして、そういう時、私いつも自分が何物かに襲われるの……。だから、だから怖くて……もしこれが現実じゃなく、私の見てる夢だとしたら……」 「お母さん!」 瞭が、松子に駆け寄り抱きしめた。 「大丈夫、大丈夫だよ。これは夢じゃない。お母さん、泣かないで……」 恥ずかしさも忘れ、懸命に母親を慰める瞭。一同は、心を打たれたように静まり返った。 「私も、これは夢だなんて思ってないぞ。皆しっかりしよう、これは現実だ」 嵐山敏行が言った。 「……そうや……ほんま、皆しっかりしようや。麗さん、あんたどう思うの?」 西沢が、疲れ切った顔で八木に尋ねた。 八木は長い髪をかき上げて、呟いた。 「分からない。それより休みたいわ」
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