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「あ、悠にぃ! おっかえり~」
いつの間にか楽屋の前に着いていたらしく、ずいぶんとご機嫌な潤が走り寄ってきた。
その勢いのまま飛び付いてきた潤を支えきれず、廊下に派手な音をたてて尻餅をついてしまった。
「いった~。もう悠にぃ、ちゃんと受け止めてよ? おじいちゃんじゃないんだからさ~?」
「あ……、悪い」
「悠にぃ? どうかした? どこか痛いの?」
座り込んだまま動かない俺を潤が覗き込んだ。
笑おうとして、上手くいかずに俯く。
それを見た潤が表情を変えた。
いつもの無邪気な雰囲気は欠片もなく、心配そうな眼差しが痛い。
弟である潤に気遣われてるという事実に、自分の情けなさが身に染みる。
そんな潤に、堪えていたものが崩れそうで手で顔を覆う。
ぽんぽんと優しく背中を撫でる潤の手に促されるように、押し出した声は情けなく震えていた。
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