第1章

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誰もいなくなった教室でふぅと息を吐く。 すると、掃除用具入れがいきなりガチャンと開いた。 「あー…、息止まるかと思った。」 「ちょっと美由…、また盗み聞きしてたの?」 出てきたのは、私の親友である福島美由だった。 私も美由も、大学3年生になったばかりだった。 「盗み聞きなんて人聞きの悪い、私はただ夏美の仕事っぷりを確認してただけだよ。」 美由はぷうっと頬を膨らませる。 「もー…。」 「まあまあ怒らないでよ。この、佐倉夏美のカウンセリング教室も人気出てきたんだし。」 私は月、水、金の放課後にカウンセリングを開いている。 元々は将来カウンセラーを目指す私を見て、美由が勝手に相談者を募り始めたのがきっかけ。 ちょっとだけねって言って遊び半分で始めたのに、もう今回で24人目になる。 口コミで広がり、最初はここの学生だけだったのが、今ではさっきみたいな近くにある高校の生徒までくるようになった。
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