わたしのオト

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いつもわたしは土手側、ソウタは自転車を押しながら車道側。 ママチャリが カタカタ歌う 風が遊ぶままに ふと見上げた空には 掴めそうな入道雲 「…もう夏なんだ」 「うん」 何気なく呟いた独り言に、ぶっきらぼうな返事があってまた1つ…暖い光が胸に灯る。 込み上げる幸せにちょっと大胆かな、なんて思いながらも 「ねぇ今年は…」 『海に行きたいな』 そう言いかけてわたしはとっさに唇を噛んだ。 だけどソウタが 「…今年は暑くなるらしいし、海でも行こうか」 …いつもそう。 わたしの考えてるコトなんてソウタは全部お見通し。 自然にほっぺたが緩んだ。 でも今 言葉をつなげるのをためらったのは、わたしによくある「言いかけて恥ずかしくなる」ッてものではなくて。 自分の体が最近おかしい事を思い出したからだった。
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