精一杯の声で

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『三橋紗都希』 ネームプレートを確認してスライドドアを少し乱暴にノックする。 「どうぞ…」 静かな恵美さんの声がした。 思い切ってドアを開ける。 「…ソウちゃん…きてくれたのね…」 恵美さんの言葉に頷きながらも、切れた息では『こんばんは』すら言えなくて。 でもそんな事すら構っていられなくて、ボクからはちょうど恵美さんで隠れるベッドの様子を探る。 2,3歩踏み込むと… 「…っ…」 真っ白な部屋の 真っ白なベッドに 真っ白な顔をした サツキが目を閉じていた 手を伸ばせば 絶対に届く距離なのに 何故だか とても 遠くて 「…サ…ツキ…」 意味もなく漏れたボクの声は 情けないほどに掠れていた。    
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