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「おはよ」
自転車を止めてキミのそばへ行く。
カバンはカゴの中のまま。
「何見てんの?」
ボクの質問を待ってましたとばかりにサツキはボクのYシャツの袖をひっぱって川を指差した。
「川?」
確認するように聞くと大きく頷いたサツキ。
よくわからないけど、しつこく袖を引っ張るもんだから一応覗き込んでみた。
…いつもと同じようにしか見えない。
さっぱりわからないボクはよっぽどマヌケな顔でサツキをみたんだろう。
振り返ったボクをみキミは吹き出した。
「なんなんだよ」
少しふてくされてボクが言うとサツキは笑いながらもう一度川を指差した。
そして手を顔の横へ持っていって、手の平と甲を交互に見せる…俗にいう「キラキラ」という表現をした。
…なるほど。
川面が朝日を受けてキラキラと光る様子が彼女には嬉しかったらしい。
確かにここ数日はずっと曇りか雨で朝からどんよりした空だったから、川面がこんなにキラキラしてるのは久しぶりに見るかもしれない。
「景色」というのものにサツキはとても敏感で。
サツキは精一杯の笑顔でボクにそれを伝える。
…そう
サツキには
声がないから。
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