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―――彼、安藤キリヤの体は消えて行く。 風に吹かれた煤の山のように。 竹刀を背中の四次元ポケットにしまう。 そして回顧した。 様々な形で命を落とした、何千何万の人間たちを。 だがその中でも、安藤キリヤは特殊だった。 彼女は長い黒髪を靡かせながら、安藤キリヤの砂時計を見た。 彼女は相手の心も読める。 何も知らない安藤キリヤは、この砂時計を見、『半分も残っている』と解した。 愚民……いや、違う。 奴は類稀なる愚か者だ。 そうだ、安藤キリヤの砂時計は、高校生にしてもう『半分しか』残っていない。 冥界の住人、しかしいまだ一少女である彼女に、事の真相を教えるという任務はあまりにも過酷だ。 だが、彼女は安藤キリヤがここに来る日を350年も前から心待ちにしていた。 安藤キリヤ、現世での彼と私は似ていたから。 彼女はクールにフッと笑った。 彼が可笑しいというわけではない。 自分が、自分のことが可笑しかった。 ただ、なんとなく。 ……行ってこい、安藤キリヤ。 貴方の出す答えを、心待ちにしているから。  
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