11人が本棚に入れています
本棚に追加
―――彼、安藤キリヤの体は消えて行く。
風に吹かれた煤の山のように。
竹刀を背中の四次元ポケットにしまう。
そして回顧した。
様々な形で命を落とした、何千何万の人間たちを。
だがその中でも、安藤キリヤは特殊だった。
彼女は長い黒髪を靡かせながら、安藤キリヤの砂時計を見た。
彼女は相手の心も読める。
何も知らない安藤キリヤは、この砂時計を見、『半分も残っている』と解した。
愚民……いや、違う。
奴は類稀なる愚か者だ。
そうだ、安藤キリヤの砂時計は、高校生にしてもう『半分しか』残っていない。
冥界の住人、しかしいまだ一少女である彼女に、事の真相を教えるという任務はあまりにも過酷だ。
だが、彼女は安藤キリヤがここに来る日を350年も前から心待ちにしていた。
安藤キリヤ、現世での彼と私は似ていたから。
彼女はクールにフッと笑った。
彼が可笑しいというわけではない。
自分が、自分のことが可笑しかった。
ただ、なんとなく。
……行ってこい、安藤キリヤ。
貴方の出す答えを、心待ちにしているから。
最初のコメントを投稿しよう!