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《―――これからどうするよー? カラオケは昨日も行ったっしょー》
《もうすぐ7時だし、サイゼでメシっとくかー》
《三日連続サイゼやーん》
『いってぇ……!!』
キリヤは後頭部を押さえながら体を起こす。
染めた茶髪にウルフをかけた不必要なトゲトゲが刺さるが、もはやそれも慣れた。
ここはあのコンビニの裏手となる路地裏だ。
学校帰りは必ずこの道を通る。
近道だしな。
そして、彼が気を失った場所でもある。
後頭部の痛みも引けたので立ち上がる。
見回す。
おっと……。
見てはいけないものを見てしまった気がする。
『……俺か、コレ』
そう、自らの死体だ。
仰向けで空をみつめている。
その目に生命の息吹はない。
濁った目が、何の感情もなしに夕焼け空を見上げている。
少し向こうには大通り、人もまばらに見える。
だがこの路地裏は死角、誰も俺に気付かない。
嗚呼、泣きたい。
誰か俺を見つけてくれ。
まずは警察にでも電話しなければ。
クソッ!
こんな時にケータイがねぇ!
いや、“俺”なら目の前にいる。
そうだ、俺からケータイを借りればいい。
確かケータイはいつもブレザーの右ポケットに…、
『ッ!?』
……そうだ、俺は霊だった。
現実の物には触れられず、そして何一つ運命を変えられない。
自分のアホさ加減に呆れた。
悔しくなってすぐ横の壁にパンチをお見舞いする。
すり抜ける。
壁の向こうへ。
コンビニのスタッフルームに出た。
在庫のジュース、触れない。
売れ筋のおにぎり、触れない。
大好きなプリン、触れない。
死にたくなった。
死んでるけど。
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