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そして今度は、卒業式の練習や卒業式そのものにケチをつけて、同級生や先生方など多数の人間に現在進行形で迷惑をかけている。
「だいたい、こんなの練習必要か」
同級生や先生方の迷惑も困惑も顧みず、前川は椅子に踏ん反り返りながら、更に声を張り上げる。
その直後に、僕のクラスの代表が壇上にあがったため、僕やクラスメイト達は一斉に立ち上がる。
もちろん前川は座ったままだ。
「おれ達が式中やることって言ったらさ、立てって言われたら立って、誰かが頭下げたら頭下げて、座れって言われたら座ってさ、要は立って頭下げて座るだけだろ。こんなの小学生だって練習無しでできるだろ」
なあ的山、前川はまたもや僕に同意を求めた。
小学生でも出来ることを出来ていないお前は幼稚園児か、と口から飛び出しそうになる嫌みをどうにか飲み込んで、僕はまたもや無視をする。
それと同時に、座っていた時よりも立ち上がってからの方が前川の声が五月蝿く聞こえる事に気がつき、呆れを通り越して「よくもここまで騒がしくなれるものだ」と感心してしまう。
それから、卒業証書のレプリカを受け取ったクラスの代表と共に礼をし、再び席に着いた時には、前川の声は更に大きくなっているように感じられ、自分の声がどれだけの音量か前川自身は気づいているのか疑問に思い、恐らく前川の送受する音量を調節する、摘みか何かが故障して機能が欠落しているのだろうと結論づけた。
そんな筈はない事など、言うまでもない。
その後も前川は、一切口を休めることなく延々と喚き続けた。
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