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燐条が何を言いたいのか分からず首を傾げていると、
「……俺はお前に負けたんだよ。忘れたのか」
と、予想だにしない答え。余計に首を傾げた。
「…………?」
「ンだよ、そのツラは」
「いや……だって決着ついてないだろ」
「あれだけ暴れといてよく言えるな」
呆れたと呟くように言って盛大な溜め息。
確か……破壊衝動に襲われた俺が燐条をボコボコにした筈。
で、トドメって時にアリス達が現れて……
燐条は灰夜に担がれて俺から離れて行った。
「……やっぱり決着ついてないだろ。仮に破壊衝動を含めたとしても結局は逃げられたし」
「逃げた訳じゃねえ!」
室内に燐条の叫びが響く。
……声でけぇよ。みんな耳塞いでるじゃねーか。
「……破壊衝動ってのが二重人格でない以上、あれはテメェの意志。確かに決着がついたのかと言われりゃ微妙な所だが、あのままじゃどの道、俺の負けは決まってた。……決着はついてなくても、勝負に負けた。そう言うことだ」
「……驚いたな。お前が負けを認めるとは思わなかったよ」
「好きで認めたわけじゃねえ。それが現実だから受け止めただけだ」
「……そうか」
見た目にそぐわず意外に真面目で、優等生で通ってる燐条。
戦いに対する思いは歪んでいるが、今だけは立派な戦士に見えた。
ムカつく奴だけど、ちょっと大人っぽいな。
「……で、なにが望みだ」
「……あ?」
「金か? それとも俺を痛めつけるのか?」
しかし、そんな雰囲気には到底合わないであろう事を言い出す燐条。
相変わらずの睨みを効かせて。
なんか、悪人に脅されたみたいな台詞だな。
見た目的には完全に燐条が悪人だけどな。
「……いや、なんの話?」
「あァ? 忘れたのか能無し。これだから天性のバカは……」
「ぐ……!」
落ち着け俺……こんな所で破壊衝動に襲われたらまた迷惑かけちまうだろ……
別に燐条は構わんが。
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