20.〝バカミヤ〟

18/29
10891人が本棚に入れています
本棚に追加
/533ページ
燐条が何を言いたいのか分からず首を傾げていると、 「……俺はお前に負けたんだよ。忘れたのか」 と、予想だにしない答え。余計に首を傾げた。 「…………?」 「ンだよ、そのツラは」 「いや……だって決着ついてないだろ」 「あれだけ暴れといてよく言えるな」 呆れたと呟くように言って盛大な溜め息。 確か……破壊衝動に襲われた俺が燐条をボコボコにした筈。 で、トドメって時にアリス達が現れて…… 燐条は灰夜に担がれて俺から離れて行った。 「……やっぱり決着ついてないだろ。仮に破壊衝動を含めたとしても結局は逃げられたし」 「逃げた訳じゃねえ!」 室内に燐条の叫びが響く。 ……声でけぇよ。みんな耳塞いでるじゃねーか。 「……破壊衝動ってのが二重人格でない以上、あれはテメェの意志。確かに決着がついたのかと言われりゃ微妙な所だが、あのままじゃどの道、俺の負けは決まってた。……決着はついてなくても、勝負に負けた。そう言うことだ」 「……驚いたな。お前が負けを認めるとは思わなかったよ」 「好きで認めたわけじゃねえ。それが現実だから受け止めただけだ」 「……そうか」 見た目にそぐわず意外に真面目で、優等生で通ってる燐条。 戦いに対する思いは歪んでいるが、今だけは立派な戦士に見えた。 ムカつく奴だけど、ちょっと大人っぽいな。 「……で、なにが望みだ」 「……あ?」 「金か? それとも俺を痛めつけるのか?」 しかし、そんな雰囲気には到底合わないであろう事を言い出す燐条。 相変わらずの睨みを効かせて。 なんか、悪人に脅されたみたいな台詞だな。 見た目的には完全に燐条が悪人だけどな。 「……いや、なんの話?」 「あァ? 忘れたのか能無し。これだから天性のバカは……」 「ぐ……!」 落ち着け俺……こんな所で破壊衝動に襲われたらまた迷惑かけちまうだろ…… 別に燐条は構わんが。
/533ページ

最初のコメントを投稿しよう!