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「先輩、私の悩みを聞いて下さい。
「自分で言うのも何ですが、私は冷たい人間です。
特に動物は大嫌いで、ペットを飼う人の気が知れません。
でも、そんな私じゃなくても、あの時はああする他なかったでしょう。
「私はいつものように、新幹線を運転していました。
少し眠くて、怠い気持ちで運転していたと思います。
「その時、前の方の線路の真上に、何か黒い固まりがあるのに気付きました。
よく目を凝らして見ると、それは猫でした。
死んだ親猫に寄り添うようにしている、子猫が見えました。
あ、はい。
私、目はかなり良いんですよ。
「話が逸れましたね。
猫の話です。
まだ距離があったので、急ブレーキを掛ければ止まることが出来ました。
でもそんなことをする運転手は、普通いないでしょう。
私も、普通の運転手でした。
「その日からなんです。
夜寝ていると、耳元に猫のなき声が聞こえるんですよ。
いえ、鳴き声じゃなくて、泣き声です。
ハッと目を開けても、枕元には何も居ないんです。
そんなことが毎日毎日です。
もう1週間にもなります。
私、もう気が変になりそうで……。
「先輩、私はどうしたら良いんでしょう?」
尋ねる私に、先輩は笑顔で言った。
「幽霊なんていやしないさ。君はね、本当は優しい、暖かい心の持ち主なんだよ」
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