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久しぶりに出た地上の澄んだ空気を吸いながら、覚の妖怪の古明地さとりは空から見る山々の緑を楽しむ。
彼女は普段なら地底の旧都にある自らが持つ屋敷にいるはずだが以前、彼女のペットが起こした異変のおかげで少しずつ彼女の様な周りに良いと思われない妖怪達の住む地底と地上の出入りについて隙間妖怪にとやかく言われなくなった。だからといって主たる自分が屋敷に不在となるのは好ましくないと思い昨日までは地上に出るなどと考えもしなかった。が、主人を想うペット達に気分転換に地上に出てみてくださいと言われては嫌とは言えなかった。
「飼い主がペットに心配されるとは思いもしませんでした……久しぶりの地上はやはり青いですね、綺麗です……ん?」
雲一つ見当たらない快晴な空に一点の濁りを見つけさとりは目を細め黙視する。鳥?いやもっと大きい。それに飛行と言うより落下と言った方が適切だ。あれは、人だ。手足をばたつかせることなく、落下することにより起こる暴風に身を任せている。恐らく気絶しているのだろう。
「このままでは地面に叩きつけられてしまいます……!」
急発進しさとりは全力で飛ぶが間に合わない。距離が離れすぎている。山の中に人間は消えていった。その瞬間ざっぱーんと水の弾ける音が響く。どうやら運良く河童の水浴び場である深い川に落ちたようだ。
しかし、それはそれで拙い。もし人間が泳げなかったら溺死してしまう。しかし、河童がいるから放っておいても良いだろう。古来より河童は人間を盟友だと言い張っているのだから勝手に助ける筈。
しかし、さとりは再び人間を追い飛び続けた。少し迷いはしたが好奇心が勝った。
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