2章 斎藤という男

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「お、速かったな。新記録じゃね?」 それから数十分、電話の相手は車を飛ばして現れた。 「そんな事より副長!総司は、総司はどこですか!?」 「これ」 土方の指の先を辿ると、そこには少女がいた。 男の剣幕に引いているようで、気持ち土方の影に隠れるようにいた。 「……どこですか?」 「だから、これが正真正銘俺達の知っている沖田総司だ」 土方は奏のを男の前に押し出す。 「だから、総司じゃないって言ってんでしょーが!てか、これって言うな!」 奏と土方のやり取りを見ていた男が口を開く。 「やっぱり総司じゃないですよ。だって総司ならボケですもん。ツッコミなんて出来ませんて」 「どんな理由だぁ!!」 奏は思わずツッコんだ。 「まあ、気を取り直して…コイツは斎藤五郎。俺達は(はじめ)って呼んでるけどな」 もちろん奏は知っている。 土方と一緒にテレビカメラの前に現れる事が多い。 「で、コイツが……」 「沖田奏です!総司じゃありませんから!」 沖田総司などと紹介される前に、名前を強調しながら自己紹介する。 「記憶がないから、とりあえず本部に連れて行こうと思ってな」 そうですか。と言うと斎藤は車に乗る。 「とりあえず乗ってください。遅刻すると山南さんのお説教ですよ」 これまでの興奮が嘘のような冷めた口調で土方を促す。 「悪いな」 土方は奏に車に乗るよう促す。 これから自分はどうなるのだろうと一抹の不安を感じながら、奏は車に乗り込んだ。 三人はこうして警視庁へと向かったのだった。
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