3章 壬生狼組

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来てしまったよ、警視庁。 車が停まり、降りると目の前には大きな建物。 奏はその建物を呆然と見上げる。 今まで重要機密と明かされた事のない壬生狼組の本部がこの中にある。 「あの、最初に聞いといていいですか?」 建物に入ろうとする土方と斎藤を呼び止める。 「もし、私が沖田総司じゃなかったら…私はどうなるんでしょうか?」 結構深い所まで足を踏み入れてしまった奏。 これで実は無関係でした。となった時に口封じのために消されるのではないかと心配になる。 「まあ、ベラベラ喋られたら困るが、別に殺したりはしねぇよ。それに喋ったとしても到底信じられる内容じゃねぇしな」 確かに…… いまだ半信半疑な奏は、土方の言葉に納得する。 それでもまだ、足を踏み入れる勇気のない奏を、土方は腕を掴んで引っ張り込んだ。 警視庁の地下深くに、壬生狼組の本部はあった。 「おはようございます」 そう言って最初に部屋に入ったのは斎藤。 「あれ、斎藤君?さっき帰ったばかりじゃなかったっけ?」 1時間ほど前に出て行った斎藤が戻ってきたため、中にいた人物は驚いた。 「ここ出た途端に副長から電話がありまして…」 「なるほど、大変だね。で、土方君は?」 「いい加減、覚悟を決めろ!」 「分かってますよ!入るタイミングくらい私の好きにさせてくださいよ!」 部屋の中にまで聞こえてくる言い合いに、部屋にいた人物は不思議そうな顔をして斎藤を見る。 「早くしろっ!!」 土方の怒鳴り声と共に、奏は部屋の中に投げ入れられる。 「ギャッ!?」 いきなり見ず知らずの少女が転がり込んできた。 斎藤はサッと避け、元々中にいた人物が受け止める。 「アンタ、警察でしょ!?もっと優しくしなさいよ!」 特に気にする風もなく、土方は優雅に部屋に入ってきた。 「山南さんに受け止めて貰えたから転がらずにすんだんだ、きちんと例を言え」 斎藤にそう言われて初めて斎藤、土方以外に人がいる事に気づいて我に返る奏。 「あ、えっと……ありがとう、ございます?」 「あ、おはよう、山南さん」 「…土方君、彼女は?」 「説明は後だ。鍵貸してくれ」 土方は山南に向かって手を出す。 「…もしかして」 「まあ、それを確認するためにな。菊一文字の鍵貸してくれ」 山南は机の中から小さな鍵を出して、土方に渡す。
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