3章 壬生狼組

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土方は山南から鍵を受け取ると、部屋の奥にあれショーケースの前に行く。 ショーケースを鍵で開けると、刀を取り出した。 「総司、ちょっと来い」 「だから総司じゃ…」 文句を言いながら土方の所に行くと、奏は動きを止めた。 「これ……」 今まで本物の刀を見た事が無いはずの奏だったが何故か懐かしさを感じ、吸い寄せられるように手を伸ばす。 そして、すぐに我に返って手を引っ込める。 「それ、剣ですよね?」 「あぁ、お前が昔使っていた刀だ。ちょっと抜いてみろ」 そう言って土方は刀を奏に押し付けるが、奏は逃げるように後ずさる。 「無理に決まってるじゃないですか!刀なんて触った事ないんですからっ!」 抜いたら確実に怪我をする。 怖くて触れない奏に、無理矢理持たせる土方。 時代劇では役者が簡単に振り回しているのに、実際持ってみると想像以上に重くて驚く奏。 「全部抜けとは言わない。少しだけ引いてみろ」 斎藤にそう言われ、恐る恐る少しだけ抜いてみる。 「っ……」 思ったよりすんなりと抜け、柄と鞘の間から刃の輝きが見える。 その輝きに目を奪われた。 「…抜けたな」 「抜けましたね」 「抜けた…」 「アンタ達が抜けって言ったんでしょーが!」 三人の不思議なリアクションに言い返す。 「あれ、もしかして土方君、説明してないのかい?」 「てか、誰ですか?」 山南を見て首を傾げる奏。 テレビでも見た事ない顔だった。 「あぁ、すまない。自己紹介が遅れたね。山南敬太と言う。壬生狼組では総長…まあ、事務みたいな仕事をしているよ」 そういえば先程斎藤が山南さんと言っていた気がする。 「言っとくが、俺より立場は上だからな」 「えっ、そうなんですか!?」 副長よりも立場が上……慌てて居住まいを正す。 「ああ、そんな畏まらないでください。それより話の続きなんですが……」 そう言って、山南は説明を始めた。 奏が手にした刀は、沖田総司が使っていた刀。 この刀を使って浪士達を倒すのだが、この刀は持ち主以外は抜けないという。 つまり菊一文字が抜けたという事は、沖田総司だと証明されたのだ。 「え、うそっ!?」 「嘘じゃねぇよ、ほら」 土方は自分の刀を奏に渡す。 「抜いてみろ」 「……はぁ」 奏は土方の刀を抜こうとするが… 「えっ……ふんぅぅぅ!」 どんなに力を入れてもビクともしなかった。 奏が刀を返すと、土方はいとも簡単に自分の刀を抜いて見せた。
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