4章 土方という男

3/7
前へ
/36ページ
次へ
………………… 清々しいくらいハッキリと言う土方に、奏はツッコむのも忘れて固まる。 「けど、商売道具にしか思ってないからなぁ」 商売道具? 何が?顔が? 土方が何を言いたいのか分からず、首を傾げる奏。 土方は構わず話を続ける。 「別にモテたいとかそんなに思わないし……ただ、この少し男前の面のおかげで他人の興味を引けるわけだ。それで俺の発言を意識して聞いてもらえたら、少しは被害が減るかもしれない」 アイドルのようなCMを流しているのも、土方なりの考えがあっての事。 視聴者が少しでも意識をCMに向けてもらえるように。 「俺達が欲しいのは、人気じゃなくて信頼だ」 「……」 「何か文句でもあるのか?」 何の反応も示さない奏に、土方は照れ隠しでぶっきらぼうに言う。 「……いえ。土方さんって、ただ変な人って訳じゃないんだなぁと驚いてるだけです」 「変な人とは失礼な」 パシンと奏の頭をシバく土方。 シバかれても全く痛くなく、奏は怒る気になれなかった。 少しだけ土方歳郎という人間に触れる事が出来て、心の中が暖かい気持ちになったのだった。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

530人が本棚に入れています
本棚に追加