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…………………
清々しいくらいハッキリと言う土方に、奏はツッコむのも忘れて固まる。
「けど、商売道具にしか思ってないからなぁ」
商売道具?
何が?顔が?
土方が何を言いたいのか分からず、首を傾げる奏。
土方は構わず話を続ける。
「別にモテたいとかそんなに思わないし……ただ、この少し男前の面のおかげで他人の興味を引けるわけだ。それで俺の発言を意識して聞いてもらえたら、少しは被害が減るかもしれない」
アイドルのようなCMを流しているのも、土方なりの考えがあっての事。
視聴者が少しでも意識をCMに向けてもらえるように。
「俺達が欲しいのは、人気じゃなくて信頼だ」
「……」
「何か文句でもあるのか?」
何の反応も示さない奏に、土方は照れ隠しでぶっきらぼうに言う。
「……いえ。土方さんって、ただ変な人って訳じゃないんだなぁと驚いてるだけです」
「変な人とは失礼な」
パシンと奏の頭をシバく土方。
シバかれても全く痛くなく、奏は怒る気になれなかった。
少しだけ土方歳郎という人間に触れる事が出来て、心の中が暖かい気持ちになったのだった。
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