4章 土方という男

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「いいですよ、自分で持ちます!」 結局、突き刺さる視線の中で買い物を続けた奏。 会計を済ませて袋に詰めると、ヒョイっと土方が横から袋を持って先を歩く。 慌てて追いかける奏。 「俺、女子供に荷物持たせるのは好きじゃないんだよ」 私に当て嵌まっているのは女の方か、子供の方か? 少し気になったが、自分を気遣ってくれているのが分かって奏はそれ以上何も言わずにお言葉に甘える事にした。 奏も女の子。 男の人に女の子扱いされると嬉しいのだ。 しかし、あと少しでマンションに着くという所で土方は立ち止まる。 「土方さん?」 奏は何事かと声をかけるが、土方は返事をせずに鋭い視線で辺りを見渡している。 しかし辺りには誰もいない。 首を傾げている奏に、土方は鋭い声で言う。 「総司、俺から離れるなよ」 「え?」 荷物を奏に渡すと、土方は刀の柄に手を掛ける。 一瞬にして緊迫した空気になる。 そして次の瞬間、2人の前に刀を持った着物の男達が現れた。 「これって……」 「あぁ、浪士達だ」 土方は言いながら、刀を素早く抜き取った。 奏は近くで浪士を見るのは初めてだった。 浪士の目は異常なほど殺気立っていて、思わず後ずさる。 今まで生きてきた中で、殺気を向けられた事など今まで無かったのだから当たり前だ。 「総司、俺があいつらと戦ってる隙をついて逃げろ。いいな!」 「そんなの出来ません!敵前逃亡は法度違反です!」 「え?」 「え?」 奏の言葉に思わず振り返る土方。 しかし奏も自分が言った言葉の意味が分からないといった顔をしている。 「やっぱ、お前は総司だな」 土方は奏を見てニヤリと笑う。 「けど、この人数をお前守りながら戦うのはちと骨が折れる」 5人の浪士達が、ジリジリと2人に近づいてきていた。 「……」 足手まといだと言われてしまえば、奏はそれ以上何も言えなくなる。 鞄の中にある携帯を握りしめる。 次の瞬間、土方に向かって浪士達が斬りかかった。 土方は強かった。 一瞬で浪士を1人斬り、斬られた浪士は消滅した。 奏は浪士が斬られた瞬間に踵を返して走り出した。 走りながら鞄の中から携帯を取り出し、壬生狼組に通報する。 「もしもし!土方さんが……土方さんが浪士と戦ってて!」 電話を切って振り返ると、土方がまた1人浪士を斬った所だった。
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