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朝、目が覚めて俺は、自分の部屋に戻った。 それから着替えを済ませて、貴重品を持ってドアに向かうと、物音がした。 『朝早くから、何処に行くんだよ。』 その声に振り向くと、仁が起き上がってこちらを見ていた。 『...。』 『かず??』 そう言われて俺はまっすぐ、仁を見た。 『帰ったら、話す。だから、今は見なかったことにして。』 そう言うと仁は下に降りてきた。 『約束しろよ??』 『あぁ。』 『それと、聖にも話してやれ。ちゃんと、言うんだ。』 そう言われて俺は黙った。 『帰ってきたら、ちゃんと俺が連れていく。』 仁の目は、真剣だった。 俺は、何も言わずに小さく頷いた。 『じゃあ、いってらっしゃい。』 そう言われて俺は部屋を出た。 寮を出て俺はタクシーで目的地を目指した。 その目的地は病院。 そして、到着した俺はまっすぐ、ある病室に向かった。 ドアをノックして、声が聞こえて、中に入った。 『あ、かめ。』 『...田口。』 俺が椅子に座ると、田口が俺の頬に触れた。 『かめ。この痣、どうしたの??』 『...なんでもない。』 そう言うと田口が心配そうな顔をした。 『そんなことより、どうだったの??』 『結果のこと??』 『そう。』 そう言うと田口は手を戻して、口を開いた。 『..再発は、食い止められた。』 『....良かった。』 俺はそう言って田口の手を握った。 それからしばらく話をして、俺はもう一つの本題に入った。 『田口。』 『ん??』 『俺は一つ目の約束を守った。』 そう言うと田口が俺を見た。 『...。』 『だから、田口も一つ目の約束を守れよ??』 『...。』 田口は俯いた。 『田口。』 『今さらって思われてるよ。もう、5年も経ってるし。』 『聖は今でも、田口のこと忘れてない。』 そう言うと田口は、泣きそうな顔をした。 『俺は、聖を救いたい。だから、田口が言う勇気がないなら、俺が聖に言う。』 『かめ。』 『そのかわり、聖が会いに来たら、ちゃんと会えよ??』 そう言うと田口は、小さく頷いた。 『じゃあ、決まりな。』 そう言うと田口は優しく微笑んだ。 『なに??』 『かめって、やっぱり優しいよね。』 そう言われて、俺は田口を睨んだ。 『うざっ。』 そう言って俺らは、互いに笑った。
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