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それから俺らは庭に向かい、座っていると聖がやってきた。 『赤西、話って...。』 俺は聖と目が合った。 聖は気まずそうな顔をし、出口に向かおうとするのを仁が止めた。 『逃げんな。』 『...。』 『二人で話せよ。』 そう言って仁は聖を隣に座らせて、とっとと行ってしまった。 俺らの間には、沈黙が続いていた。 俺はふと聖を見た。 聖は切ない表情をしていた。 それを見て俺は正面を見た。 『聖。』 『...なに??』 『聖は、田口のこと、今でも好き??』 そう言うと聖がこっちを見ている気がした。 そして俺は、聖を見た。 『どうなの??』 『...。』 『まだ、怒ってるの??』 そう言うと聖は真面目な顔をした。 『かめ、俺は。』 『田口が何処に居るか、知りたいんだろ??』 そう言うと聖は驚いていた。 『なんで..。』 『田口は、病院に居る。』 そう言うと聖は立ち上がった。 『どうして。』 『信じられないなら、確かめろよ。』 そう言うと聖は俯いた。 『田口は、白血病だったんだ。』 そう言うと聖は顔を上げた。 『どういうことだよ。』 『田口は消えた訳じゃない。骨髄移植を受けるために、入院してただけ。』 そう言うと聖は座り込んだ。 『田口は聖に会いたかったと思う。』 『そんなこと。』 『俺には分かる。』 そう言って俺は立ち上がった。 『本当のことを言えば、相手がどんな顔をするのか、想像がつく。』 『...。』 『それを考えると、何も言えない。』 そう言って聖を見た。 『それで今まで田口の所に通って、検査結果を待ってたんだ。』 『...。』 『再発は食い止められたって、田口が言ってたよ。』 そう言うと聖の目に涙が溢れた。 『聖の寂しさに見てみぬフリをして、ごめん。』 そう言って頭を下げた。 『やめろ。』 そう言って聖に俺は抱き締められた。 『かめ。』 そう言って聖はギュッと抱き締めてくれた。 それから聖が落ち着くまで、俺らは庭で時間を過ごした。
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