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- A あれから俺は、自分に負けないように、かめを探し始めた。 途中から聖と一緒に探すようになったが、何処にも居なかった。 田口の所に行って聞いてみたが、田口も知らないと言っていた。 その病院にも話をしたが、居ないと言われた。 そして、探し始めてから1ヶ月が経った今日。 学校が終わり、いつも通り道を走り探していると、道端で座る女の人見つけた。 俺はそっと近づいて、その人の隣にしゃがみこんだ。 『大丈夫ですか??』 そう言うとその人は顔を上げた。 その顔はなんだか、見覚えがあるような気がした。 「もしかして、仁くん??」 『あ、はい。』 「やっぱり。」 そう言ってその人は立った。 『あの...。』 「はじめまして、和也の母です。」 そう言われて俺は目を見開いた。 『かずのお母さん。』 「あなたも、和也を探してるの??」 『はい。』 「残念だけど、私にも分からないの。」 お母さんはそう言って、申し訳なさそうにしていた。 『そうですか。』 「あなたは、和也の大切な人なんでしょうね。」 そう言って俺は首を傾げた。 『どうしてですか??』 「この街に帰ってきて、少し経った時に、和也の荷物を見たの。その中に入ってたアルバムに、あなたの写真がたくさん入ってたわ。」 『そうなんですか。』 「きっと和也は、あなたの為に生きてるんだと、私にも分かったわ。それに、和也が周りに壁を作らないで接してるのは、数少ないのよ。」 そう言われて俺は泣きそうになった。 『もう一度、会えますかね??かずに。』 そう言うとお母さんはニコッと笑った。 「きっと会えるわ。これからも和也のこと、よろしくお願いします。」 そう言って頭を下げられて、俺も頭を下げた。 そしてかずのお母さんは歩いて行って、俺はしばらく見送った。 そして姿が見えなくなって、俺は下を見ると荷物が置いてあった。 『これ。』 俺は急いでかずのお母さんの後を追った。 そして人だかりを見て、俺は急いで人を割って前に出た。 『!!!』 そこには、さっきまで話をしていたかずのお母さんが横たわっていた。 それからは必死だった。 周りの流れは早くて、でも、自分の時間は止まっている気がした。 救急車の中、ただ俺は一緒に居ることしかできなかった。
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