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隣町の病院には行かず、今、住んでいる町の大きな病院に着いた。 運ばれる姿を俺は見守った。 すぐに処置室に入って、俺は椅子に座った。 それから俺は聖に連絡をした。 30分もしない内に、聖や中丸が来た。 『赤西。』 そう言って二人は目の前に立った。 『聖。中丸も。』 『おばさんは??』 『中に入ってった。』 聖の問いに、俺が答えると聖は隣に座ってきた。 それから三人で何も話さずに座っていた。 すると足音が聞こえてきて、その足音は俺らの前で止まった。 『..じゅんの..。』 聖の声が響いて、俺は田口を見た。 『かめのお母さんは??』 『処置室の中。』 田口はそれを聞いて、聖の隣に座った。 『...かず...。』 俺は手を握りしめ、小さくそう言った。 『かめは、来れない。』 『え??』 田口はこちらを見た。 『かめ、今は来れない。』 『居場所、知ってんのか??』 そう言うと田口は頷いた。 『何でだよ。』 それに反応したのは、聖だった。 『何で言わないんだよ。』 『かめとの約束だから。かめも俺との約束は、守ってくれたから。』 田口は真剣だった。 『かめも俺の気持ちを分かってくれてる。俺もかめの気持ちをわかってるつもりだから。』 田口の言葉に俺らは、何も言えずにいた。 『何で、かずは来れないんだよ。』 『事情があるんだ。今すぐは無理なんだよ。』 田口がそう言った瞬間、ドアが開いた。 医者はまっすぐ俺らの所に来た。 「ご家族の方ですか??」 『いえ。』 そう言って俺は立ち上がった。 「そうですか。」 『あの...。』 「命に別状はありません。過労ですので、一週間ほど安静にしていれば、大丈夫ですよ。」 そう言って医者は頭を下げて行ってしまった。 それから俺らは何も言わずに、各自の帰る場所へと帰った。
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