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俺が歩き出すと、智も歩いた。 すれ違い、智は中庭を出ていった。 俺は仁に近づいて、仁の頬に触れた。 『仁、痩せたね。』 そう言うと仁は俺の手を握った。 『かず。』 『ごめんね。』 そう言うと仁は俺を抱きしめた。 『かず。』 『仁。』 しばらく俺らは抱き合って、お互い体を離してから芝生の上に座った。 『仁。』 『なに??』 『話があるんだ。』 そう言うと仁はこちらを見た。 『俺、手術を受ける。』 『え??』 『仁に今まで隠してきたこと、話すね。』 そう言って俺は微笑んだ。 『俺、元々心臓に疾患があるんだ。』 『...。』 『今まで誤魔化してたけど、発作が出るから運動は出来ないんだ。』 『運動会とかは、その理由で??』 そう聞かれて俺は頷いた。 『仁の側から離れたのは、ゆいちゃんのことだけじゃない。仁の側で倒れたりしたくなかった。』 『かず。』 『俺、仁が好き。』 そう言うと仁は固まった。 けどすぐに、仁は口を開いた。 『かず。』 『なに??』 『俺も言っていい??』 そう聞かれて俺は頷き、身構えた。 仁はそんな俺の手を握って、俺を見た。 真剣な目と表情をして、口を開いた。 『かず、何ひとりで格好つけて姿消してんだよ。』 『...。』 『昔から俺ばっかりかずに守られて、励まされて。情けないだろ。』 そう言った仁に、俺は首を横に振った。 『それは違う。俺は仁を励ましに、戻ってきたわけじゃない。俺が励まされに戻って来たんだ。』 『かず。』 『どうするべきか、分からなくて。不安だったんだ。手術を受けることが。でも、仁に会って俺が励まされた。だから、手術を受けよう思えた。』 そう言うと仁は、俺は優しく抱きしめた。 『今日はどうするの??』 『仁の部屋に泊めて。』 『いいの??』 そう言われて俺は仁を見た。 『朝まで、よろしくね。』 そう言うと仁は微笑んだ。
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