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寮を出て少し歩くと、声が聞こえた。 周りを見ると、智だと気付き俺は足を止めた。 『どうしたの、智。』 『乗って、送ってく。』 そう言われてタクシーのドアが開き、俺は中に入った。 『追いかけてくれたの??』 『かめを一人で帰すわけにはいかないんだよ。』 そう言って智は微笑んだ。 そこから病院に着くまで、学校のことを沢山聞いた。 病院に着いてからすぐに検査を受けて、俺は病室に入った。 『おかえり、かめ。』 智は椅子から立ち上がって、俺はベッドに座った。 『待っててくれたんだ。』 『まぁね。』 そう言って智は椅子に座った。 『ねぇ、智。』 『ん??』 『仁は、元気だった??』 俺は智の顔を見つめた。 『元気だったよ。』 『それにしては、やつれてたね。』 そう言うと智は苦笑した。 『かめに会えてなかったからね。』 『そっか。』 そう言うと智は、俺の手の上に手を重ねた。 『智??』 『みんな、心配したよ。』 『うん。』 『四六時中、探し回ったんだよ。』 『ごめん。』 『でも、こうしてまた、かめに会えたから許してあげる。』 そう言って智は笑ってくれた。 『あ、そろそろ行かなきゃ。』 そう言って智は立ち上がり、ドアへと向かった。 ふと智は振り向き、俺を見つめた。 『かめ。』 『ん??』 『俺らはいつでも側にいる。かめを一人にしないからな。』 そう言ってニコッと笑う智を見て、俺は胸が熱くなった。 『ありがとう。』 そう返すと智は満足そうに帰っていった。 それからの俺は、いつもより気分が良く、充実した日を送った。
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