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仁に全てを打ち明けてから、俺は手術の為に必要な検査等をして、あっという間に前日になってしまった。 朝から静かな病室で、横になって俺は明日のことを考えていた。 午後になっても静かで、俺はそっと目を閉じた。 するとノックが聞こえて、顔を向けた。 『どうぞ。』 そう言うとドアが開き、仁が入ってきた。 『調子はどう??』 仁はそう言いながら、俺の側に来た。 『学校は??』 『今日もテストだったから、早く終わったんだ。』 『そっか。』 そう言って俺は起き上がった。 それから俺たちはたくさんの話をして笑った。 そのほとんどは俺が仁に話しかけた。 『でさ、』 『かず。』 話を遮って仁は、ベッドの端に座り、俺の肩を引き寄せた。 『かずの頭の中、明日の手術でいっぱいだろ。』 『...。』 『それでもって、不安に押し潰されそうになってる。』 俺はそう言われて泣きそうになった。 すると仁は、そっと俺を抱き締めてくれた。 『ねぇ、かず。』 『ん??』 『俺、不安なんかないよ。』 そう言うと仁は体を離し、俺を見た。 まっすぐな眼差しに、俺はじっと仁を見つめた。 『かずは必ず、帰ってくる。死んだりしない。』 『わかるの??』 『わかるとかじゃない。信じてるんだ。』 『...。』 『上手く言い表せないけど、俺はそんな気がする。』 『口下手だね、相変わらず。』 そう言って俺は笑った。 すると仁も笑って、俺の髪を撫でた。 『やっと笑ってくれた。』 『仁。』 『かず、これだけは言っとく。』 『なに。』 そう言うと仁は俺の手を握った。 『俺は待ってる。たとえ、すぐに目を覚まさなくても、俺は信じて待ってる。』 『仁。』 『あの時は出来なかったけど、今は出来る。ちゃんと、かずを信じてるから。』 そう言われて俺は嬉しかった。 『ありがとう。』 『だから、かずも信じて。必ず、帰ってこれるって。』 俺はそう言われて大きく頷いた。 『わかった。だから、今日は帰って??』 『一人で大丈夫か??』 『大丈夫。俺は一人じゃない。』 そう言うと仁は微笑んだ。 『じゃあ、帰る。』 『うん。』 『明日、また来る。』 そう言って仁は俺のおでこにキスをして、病室を出ていった。 一人になった病室なのに、何故か心細くなかった。 『大丈夫。』 小さく呟いたその言葉は、なんだか決意みたいな気がした。
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