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二人きりになった病室に少しだけ沈黙が流れて、やっとかずが口を開いた。 『次の検査で異常が無かったら、退院出来るって。』 『良かったな。』 『俺さ。』 そう言ってかずは俺を見つめた。 『家に帰ることにした。』 『うん。』 『母さんと一緒に暮らす。』 『うん。』 『だから、』 一瞬、不安そうに言うかずを、俺は優しく抱きしめた。 『かず。』 『仁。』 『覚えてる??手術前に、会いに来てくれた時のこと。』 『覚えてるよ。』 そう言われて俺は体を離した。 『好きだから、あの時会いに来てくれて、嬉しかった。』 『俺も会いに行ってよかったよ。』 そう言ってかずの髪を俺は撫でた。 『かずの思った通りに行動するといいよ。』 『..仁。』 『今まで以上に、自分の為に生きていけばいいんだよ。』 そう言うとかずの首に手を回した。 『かず。』 『ん??』 『かずがお母さんと暮らしても、俺はかずのこと手放したりしない。』 『うん。』 『だから、退院まで頑張ろうな。』 そう言うとかずは腕に力を入れた。 俺はかずを抱き締め返し、しばらくそのまま過ごした。 夕方になって、俺は帰る準備をした。 『じゃあ、帰るよ。』 『うん。聖たちに今日のこと、ありがとうって伝えて。』 『了解。』 そう言って俺はかずの頬にキスをした。 『またな。』 そう言って俺は病室を出た。
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