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- K
あれから俺は努力を重ねて、予定より1ヶ月早く退院することになった。
それでも退院するのは、夏が終わる頃。
毎日、仁が通ってくれていて、俺は寂しくはなかった。
「荷物はこれが最後ね。」
『うん。』
そう言うと母さんは荷物を持ってくれた。
『母さん、自分で持つよ。』
「いいの。もうしばらくは、自宅療養なんだから。」
そう言って母さんが歩き出した。
俺は後ろをゆっくりと歩き、お世話になった看護師さんたちに挨拶をし、担当の医師と話をした。
それからタクシーに乗り込み、久しぶりの風景を見た。
しばらくして俺はあることに気が付いた。
『母さん。』
「なに。」
『家、こっちじゃない。』
「そうよ。」
そう言って母さんは俺を見た。
「今から寮に向かうのよ。」
『え??』
そう言うと母さんは正面を見た。
「退院したんだから、会いたいでしょ??」
そう言われて俺は自然と顔がほころんだ。
それから30分後、タクシーは寮に着いた。
「和也。」
『ん??』
「退院、おめでとう。」
母さんにそう言われて微笑んでから、俺はタクシーを降りた。
玄関でタクシーを見送ってから、俺は振り向いた。
そしてそっとドアを開けた。
すると目の前には、聖が立っていた。
『聖。』
『かめ。』
俺は靴を脱いで、聖の前に立った。
『マジで、良かった。』
そう言って聖は俺を抱き締めた。
『色々とごめんな。』
そう言うと聖は体を離した。
『来いよ。』
そう言って聖に連れていかれた場所は、食堂だった。
『みんな。』
そこには、中丸や上田、智や錦戸まで居た。
『かず。』
そう言われて振り向くと、仁が居た。
『仁。』
『パーティーにしよ。』
そう言うとみんなが準備にかかった。
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