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あれから季節は秋になり、肌寒い時期を迎えた。 それからの日々は、高認試験の勉強や通院に忙しく、智たちにも仁にも会えずにいた。 それでもメールで連絡が取っているのもあって、俺は安心していた。 「和也。」 『ん??』 部屋で勉強していると、母さんが部屋に来た。 「用意しなさい。」 『え??』 「今、連絡があったの。赤西くんが乗ってたバスが、事故を起こしたって。」 そう言われて俺は立ち上がった。 携帯電話と財布を持って、俺は外に急いだ。 しばらくすると、タクシーが来て、目的地に急いでもらった。 タクシーの中で仁に電話を掛けたが、出る気配はなく、一気に不安になった。 タクシーは目的地に着いて、俺は支払いを済ませて、病院の中に入った。 受付で居場所を聞いて、俺は早足で向かった。 病室の前に着き、呼吸を整えてから、俺はドアを開けた。 中には智や聖が居て、こちらに気付いた。 『かめ。』 そう言われて俺は智たちに近づいた。 ベッドが見えて、そこには傷や包帯を巻いた、仁の姿があった。 『仁。』 そう呟くと仁の手が微かに動いた。 そしてゆっくりと仁の瞳が開き、視線があった。 『...かず。』 そう言われて俺は仁の手を握った。 『大丈夫??』 『平気だよ。』 そう言って仁は微笑んだ。 『ごめんな。デート、先送りになって。』 そう言われて俺は首を横に振った。 『そんなのいいんだよ。』 『今日は、ぴぃにでも送ってもらいなよ。』 そう言われて俺は、泣きそうになった。 『ぴぃ。』 『ん??』 『俺は寝るから、かずを送ってやって。』 仁がそう言うと、智が俺の腕を掴んだ。 『任せとけ。』 そう言って智は俺の肩を抱き、病室を出た。
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