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タクシーに智と二人きりになり、俺は震えていた。
『仁さ。』
沈黙を破って智は話し始めた。
『和也の家に向かう途中で事故に遭ったんだ。』
『うん。』
『命に別状はないって言ってたから、安心して。』
『良かった。』
そう言うと智は、俺を真剣な目で見つめた。
『ただ、事故の影響で後遺症が残るかもしれないんだ。』
そう言われて俺は智を見つめた。
『それって。』
『損傷してるかもしれないって。』
そう言われて俺は震えが止まらなかった。
それから俺は何も言えずに、ただ、家に着くまで黙っていた。
気付けばタクシーは家の前に着いて、智も一緒に降りた。
『まだ決まったわけじゃない。』
そう言うと智は、俺の頭の上に手を置いた。
『仁はもう気付いてる。でも、仁にとっては和也の方が大事なんだ。』
そう言われて俺は顔を上げた。
『目を覚ました時、仁は言ったんだ。かずと一緒じゃなくて良かったって。』
『どうして。』
『和也が傷ついたら、嫌だからって言ってたよ。』
そう言って智は家の前まで送ってくれた。
『また会いに行ってあげて。』
『うん。』
『じゃあ、またね。』
そう言って智は帰っていき、俺は家に入った。
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