Last

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足湯に浸かり、俺たちは海を見つめた。 『久しぶりだね。』 『四年ぶりだからな。』 そう返すとかずはこちらを見た。 『元気そうで良かった。』 『かずもね。』 そう言うとかずは、俺の手を握った。 『高認試験、受かったよ。』 『おめでとう。』 『ありがとう。』 そう言ってかずは正面を見た。 『俺ね。』 『うん。』 『仁に会えて良かったって、いつも思ってる。』 『かず。』 そう呼ぶとかずはこちらを見て微笑んだ。 『離れた日々は、すごく辛い日もあったけどさ。』 『うん。』 『俺は、仁に再会したあの日、運命を感じた。』 『かず。』 俺はそう言ってかずの手を握り返した。 『俺もだよ。』 『え??』 『ずっと、待ってたのかもしれない。かずと再会して、また話ができる日を。』 『仁。』 『心の中では、きっとかずを信じてた。』 『そっか。』 俺は立ち上がり、足湯から出た。 『かずと離れてから、ずっと考えてたことがあるんだ。』 『なに??』 『歯車みたいに、狂ったり元に戻ったりして、運命は刻まれていくんだって。』 『うん。』 『かずともいつかそうやって、運命のような再会が出来るといいなって。』 そう言うとかずは立ち上がり、俺に抱きついた。 『やっぱり、運命なんだ。』 『うん。』 『仁に出会えて、本当に良かった。』 『うん。』 そう言うとかずは一旦、体を離した。 『運命って、進んでみなきゃ分からないよな。』 『あぁ。』 『もう離れない。仁の側にずっと居るよ。』 『うん。』 『一緒に運命を切り開こう。』 『あぁ。』 そう言って俺たちは再び、抱き合った。 俺たちの長い月日の歯車は、狂ったり戻ったりしながら、日々を生きてきた。 勘違いから狂った歯車。 真実を知って、元に戻った歯車。 どちらも違うように見えて、実際は同じ運命の歯車。 その運命は限りなく、小さいかもしれない。 それでも共に運命を感じられたなら、これからは生きてゆける。 運命の歯車は自分自身を試す、そういうものだから。 END
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