02

7/8
前へ
/150ページ
次へ
中に入ってこちらを見たのは、山下と錦戸。 俺は何も言わずに着替えをした。 『ってか、仁。早く薬飲んで、寝ろよ。』 『だから、いつもの薬じゃないと飲まないって言っただろ。』 山下の心配そうな声に、赤西はダルそうにそう言った。 赤西のその言葉に、山下も錦戸もお手上げ状態な気がした。 『いつも風邪引いた時は、"いつもの薬じゃないと嫌"って言ってるよな。』 『その薬、ほんまにあるん??』 『.ゴホッ..ある..。』 咳をしながら言う赤西に、再び空気が重くなった。 俺は着替えを済ませ、山下の横を通り、下に置いた箱を出した。 そしてあるものを取り出し、箱を元の位置に戻し、俺は山下の前に立った。 その時、寝ていたはずの赤西も反射的に起き上がった。 『これ。』 そう言って俺は山下の顔の前に箱を見せた。 『...何だよ。』 少し苛ついたように言う山下の手に、俺はその箱を持たせた。 『赤西が言ってた薬。』 そう言うと山下も錦戸も驚いていた。 『ほんまに、これか??』 『...おう。』 錦戸がそう言うと、赤西はそう答えた。 『じゃあ、お大事に。』 そう言って赤西の横から、ドアに向かおうとしたら、錦戸が前に立った。 『なんで知っとるん??いつもの薬がこれって。』 錦戸はそう言って箱をチラッと見てから、俺を見た。 『何でって、当たり前だろ。』 『何がや??』 錦戸は不思議そうな顔をしていた。 俺は一息ついて、錦戸を見た。 『何がって、俺は一瞬でも赤西の親友だった。だから、知ってる。 それに、その薬は俺が赤西に飲ませたんだ。まだ、小学生の時に。』 その言葉に赤西は立ち上がりそうになっていた。 それを見た山下は、赤西を寝かせた。 それを横目に見ながら、俺は言葉を続けた。 『赤西は、ばあちゃんと住んでた。そのばあちゃんに迷惑掛けたくないって言う赤西を、俺が自分の家に連れてきてその薬を飲ませた。』 そう言って俺は錦戸から赤西に視線を移した。 『ばあちゃんには言わない。だから、仁の風邪が早く治りますようにって言いながらな。』 そう言い終わると、赤西は瞳を泳がせていた。 俺は錦戸をもう一度見た。 『わかっただろ。』 俺はそう言って錦戸を避けて歩き、部屋から出た。
/150ページ

最初のコメントを投稿しよう!

393人が本棚に入れています
本棚に追加