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そして聖は、今までに見たことがないくらい、優しい目をしていた。 『かめに怒られたことがあるんだ。』 "かめ"という言葉に、肩がピクッと動いた。 『中学に学年が上がって、初めて赤西が男もイケるって知った時、俺はかめに言ったんだ。 男が好きとか付き合いたいなんて気持ち悪いって。』 『...。』 『そしたら、殴られた。』 『...は..??』 俺は驚いた。 『やっぱり、知らなかったんだ。かめは赤西に言ってなかったか。』 『それは...。』 『人が好きになった奴が男だろうが女だろうが、関係ない。恋も愛も性別でするようなものじゃない。 自分の価値観が自分以外の人に必ず通用するわけがない。 友達なら、気持ちを考えるべきだ。 真面目にかめはそう言ってた。』 俺は何も言えなかった。 それは、中学の時のことを思い出したから。 『亀梨はそんなこと言ったんだ。』 『赤西は、かめが好きだったんだよな??』 『...。』 『それはダメだって思って、ゆいちゃんと付き合ったんだよな??』 『...。』 『かめは赤西に素直になるべきだと俺はそう思う。』 聖はすごく切ない顔を見せた。 『赤西。』 そう言って聖はブランコを降りて、俺の前に立った。 『頼むからかめを傷つけないでくれ。』 『...。』 『お前にこんなこと言うのは間違ってると思う。 最初に傷ついたのは、赤西だから。』 その言葉に、俺は聖を黙って見続けた。 『それでも、俺は赤西が嫌いだ。そして、お前の親友の山下がもっと嫌いだ。』 『...聖。』 聖が泣きそうになっているのを見て、俺は名前を呼ぶことしか出来なかった。 『過去に赤西がどん底まで落ちたのも知ってるし、病院にも未だに通ってることも知ってる。』 『...。』 『だけど、傷つけられたから傷つけるのは許せない。』 そう言ってから聖は歩き出して公園を去っていった。 それから俺は、しばらく公園に残り、門限前に寮に戻った。 部屋に着くと、亀梨が起き上がっていた。 俺は亀梨の前に立った。 『なんだよ。』 『お前、意味わかんねぇ。』 『は??』 亀梨は訳がわからないという顔をしていたが、俺は無視をしてベッドに入った。 ベッドに入った時、考えた。 きっと聖は、俺の過去を理解して、亀梨の過去を考えながら話していたんだろうと。 それでも、俺にはさっぱり分からなくて、たいして気にも止めずに、眠りについた。
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