393人が本棚に入れています
本棚に追加
- K
あれから日は過ぎて、聖と海にやって来た。
『...懐かしい。』
俺は海を見ながら、そう呟いた。
『久しぶりか??』
『あぁ。』
聖の問いかけに俺は頷きながら、そう言った。
それから俺は、人気が少ないこの海を眺めながら、砂浜に座った。
『相変わらずだな。この海人が居なくてさ。』
『まぁ、その方がありがたいけどな。』
聖はそう言って隣に座った。
俺は黙って海を見続けた。
『かめは、この海に嫌な思い出でもあるのか??』
『どうして??』
『毎回誘うのに、いつも来なかっただろ??なのに、今年は来た。』
『...俺はこの海が嫌いだ。』
そう言って立ち上がり、後ろを向くと赤西と山下が居た。
『...。』
赤西と目が合っても、赤西は何も言わなかった。
『...。』
俺は何も言わずに通りすぎ、海の家に向かった。
『いらっしゃい。って、かずくんじゃない。』
『おばちゃん。』
懐かしさが一気に蘇った。
『それに、仁くんも。おばさん、嬉しいわ。また、二人が一緒に居るところを見られて。』
おばちゃんは笑顔でそう言った。
『おばちゃん、そんなこと良いだろ。俺、久しぶりにおばちゃんの焼きそば食べたい。』
『おぉ、おばさん張り切って作るわね。』
そう言っておばちゃんは奥に入っていった。
それを見て俺は聖と共に椅子に座った。
海の家の中に、もう赤西たちは居なくて、俺はホッとしていた。
するとタイミング良く、おばちゃんが焼きそばと水を持ってきてくれて、俺らは食事をした。
『美味い!!やっぱ、おばちゃんの焼きそば、美味いわ。』
『かずくんは、いつも焼きそば食べて、そう言ってくれてたわね。』
おばちゃんは懐かしそうにそう言った。
『お腹が空いたら、すぐにおばちゃんの焼きそばが食べたくなるんだ。』
そう言うとおばちゃんは正面に座った。
『でも、おばさん思ってたのよ。』
『なに??』
『かずくんはもう、この海に来ないんじゃないかって。』
俺はおばちゃんを見た。
『仁くんとも何かあったみたいだし。』
『...。』
『でも、来てくれて嬉しいわ。』
そう言っておばちゃんは笑った。
『かずくん、お願いがあるの。』
『何ですか??』
『仁くんと話してあげて。』
『え??』
おばちゃんは真面目な顔でそう言った。
『お願い。』
今まで、おばちゃんの真剣な顔は見たことがなくて、俺は自然と頷いた。
最初のコメントを投稿しよう!