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寮に帰ってすぐに、部屋に戻った。
亀梨は椅子に座り、俺らはテーブルの前に座った。
『...俺は赤西のばあちゃんも両親も知ってる。』
『きっかけは??』
『俺の両親は赤西の両親と友達だったんだ。まぁ、赤西と会った時は、俺もばあちゃんに預けられてた時だったけどな。』
亀梨は真剣に俺を見た。
『お前がばあちゃんの家に来てから、俺は一度だけ両親に会ったことがある。』
『どこでだよ。』
『洋服屋。ばあちゃんと一緒に行って、会った。』
『...。』
『その時に、連絡先をばあちゃんが渡したんだ。』
亀梨は懐かしそうだった。
『電話が来たのは、3回。
一回目と二回目は、赤西の両親。三回目は、病院から。』
『は??』
俺がそう言うと亀梨は深く息をついた。
『事故だった。相手から派手にぶつかったけれど、車に乗っていた運転手は逃げたんだ。』
その瞬間、俺はなんとなく思い出した。
『ばあちゃんから聞いたことはある。』
『お前を迎えに行く途中だったらしい。』
俺はそれを聞いて、目を見開いた。
『嘘だ。』
『赤西のばあちゃんには、その事を伝えていた。でも、ばあちゃんはもう少し月日が経たないと話せないと思ったんだ。』
亀梨の言葉で、俺は納得した。
あの頃のばあちゃんは、すごく俺に気を遣っていた。
『俺は約束した。十年経ったら、話すって。』
『ばあちゃんと??』
『あぁ。』
亀梨はそう言って頷いた。
『もう戻ってこないと思った街に居るお前に、このことは伝えられないと思った。
それでも、母さんの提案で帰ってきて、伝えないわけにはいかないと思った。』
亀梨の表情は、比較的穏やかだった。
それからはしばらく、誰も何も話さなかった。
『俺、』
そう言って俺は口を開いた。
『俺、ますます亀梨が分からなくなった。』
その言葉に誰も話さなかった。
『なぁ、亀梨。』
俺は立ち上がり、亀梨の前に立った。
『お前は、一体...』
そう言いかけると、亀梨は立ち上がった。
『俺、今日は中丸の所に行くわ。』
そう言って亀梨は色んな物を持って出ていった。
『なんだよ、あれ。』
『かめのこと、気になる??』
聖の呟きに俺は振り向いた。
『かめを変えたのは、お前だ。』
聖はそう言って立ち上がった。
『一つだけ、言っておく。かめがゆいちゃんと何をやったか、実際に見た奴は居ない。お前らの想像でしかないんだよ。』
そう言って聖は出ていった。
俺はその意味を考えて、聖を見送った。
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