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着いたのはいつもの公園。 ゆいは腕を離して、ベンチに触れた。 『ここ、覚えてる??』 ゆいはそう言ってこちらを見た。 『あぁ。覚えてる。』 この公園のあのベンチが、今の俺と亀梨の始まりだから、忘れたくても忘れられない。 『ねぇ、仁。』 『ん??』 『亀梨くんと私は、何もないんだよ。』 ゆいは俺を見て、そう言った。 『私にその気は無かったし、これからもない。それに、亀梨くんは今も昔も、私には興味はないんだよ。』 『...。』 俺は意味が分からなかった。 『悔しかった。私は前から仁が好きで、やっと付き合えたのに、仁はいつも誰か違う人を見てた。』 『それは...。』 『亀梨くんのこと、好きなんでしょ??』 俺は目を見開いた。 『知ってたから、亀梨くんをこの場所に呼んだ。迫ったのも、私。亀梨くんは何もしてないの。だから、』 『何やってんの??』 ゆいの言葉を真剣に聞いていると、誰かが話を遮った。 振り向くとそこには、亀梨が立っていた。 『...亀梨くん。』 ゆいはそう言って亀梨の前に向かい、頭を下げた。 『今までごめんなさい。』 『...ゆいちゃん。』 『私、間違ってた。あの日、ちゃんと本当のことを言うべきだった。』 ゆいは必死にそう言った。 『ゆいちゃん、頭を上げて。』 そう言って亀梨はゆいの体を上げた。 『お母さんがゆいちゃんのこと、探してた。』 『そう。』 ゆいは亀梨を見た。 『亀梨くん、お願い。本当のことを言おう。』 『...。』 亀梨は何も答えなかった。 そして、ゆいはこちらを見た。 『詳しいことは、亀梨くんに聞いて。その方が仁や山下くんのためになると思うから。』 そしてゆいは俺に近づいて、耳元で話した。 『亀梨くんは、モテるのに意外に鈍感なんだね。』 そして耳元から離れて、小さな声で話した。 『でも、仁が亀梨くんのことを好きになっちゃう気持ち、なんとなくわかった。』 そう言ってゆいは笑った。 そしてみんなに聞こえるように声を出した。 『今まで、ありがとう。』 そして、俺を見た。 『亀梨くんの隣で笑ってる仁が好きでした。』 そう言いきって、ゆいは走って去っていった。 しばらく俺らは、黙って立ち尽くしていた。 『...亀梨。』 俺がそう言うと、亀梨は何も反応せずに、歩き出した。 その姿を俺らはただ、追いかけた。
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