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あれから数日経っても、依然として状況は変わらなかった。 相変わらず、ぴぃとかずの間には溝が埋まらない。 俺は今まで通り、ぴぃとはつるんでいるが、どうしてもかずと出くわすと、ぴぃはすぐに去ってしまう。 『おい、仁。』 今日も屋上で弁当を食べているが、ぴぃは居なくて代わりに亮チャンが居るようになった。 『ぴぃは、なんであんなに亀梨を毛嫌いしとるん??』 『わかんねぇよ。』 俺にはさっぱり分からなくて、亮チャンにそう言った。 それからも俺は、ぴぃを気にしながら授業を受けて、寮へも一緒に帰った。 そして夕食を食べて部屋に戻り、ぴぃも一緒に部屋で話をした。 かずのことは話さずに、他愛もない話をした。 するとドアが開き、部屋にかずが入ってきた。 それを見たぴぃは、立ち上がった。 そして出ていこうとすると、かずがぴぃの腕を掴んだ。 『おい。』 かずはぴぃを呼んだ。 ぴぃは睨むように、かずを見た。 『なんだよ。』 『次の日曜日、予定入れずにあけといて。』 かずの言葉に、ぴぃは険しい顔をした。 『何言ってんだよ。』 『言ったからな。逃げんなよ。』 そう言ってかずは手を離した。 『五年前のあの場所で、待ってる。』 かずはぴぃに背を向けてそう言った。 ぴぃは目を見開いたが、普通に戻って去っていった。 『かず。』 そう言うとかずはこちらを見た。 『何かあるの??ぴぃとかずの間に。』 『うん。でも、山下が怒るのも当然なんだ。俺はそれぐらいのことをした。』 かずは悲しい目をしていた。 俺はなんだか無性に抱き締めたくなった。 そしてそっと、かずを抱き締めた。 『仁。』 『ん??』 『俺が悲しい時、いつもこうしてくれたよな。』 『あぁ。』 『ありがとう。』 かずはそう言って離れた。 『そろそろ、寝るわ。』 そう言ってかずはベッドに入ってしまい、俺は先を聞くことは出来なかった。 それを考えながら、俺もベッドに入って、眠りについた。
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