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目が覚めて、俺はリビングへと降りた。 「おはよう、和也。」 『おはよう。』 俺はそう言って椅子に座った。 それから母さんが作ってくれた朝食を食べて、俺は着替えを済ませた。 それから荷物を持ち、俺は玄関に向かった。 「和也。」 靴を履き、立ち上がると母さんに話しかけられて、俺は振り向いた。 「ちゃんと、向き合いなさい。」 『分かってる。じゃあ、また。』 そう言って俺は家を出た。 それからしばらく歩いて、街とは少し離れた草原に、俺は歩いて向かった。 草原に着くと、先を見ている人を見つけた。 そっと近づいて、その人の少し後ろに一つだけある、ベンチに俺は座った。 『だいぶ、待った??』 そう言うとその人は振り向いた。 『今、来たばっかり。』 そう答えるのは、山下。 『この場所、覚えてたんだな。』 『まぁな。』 山下は目を反らして答えた。 それからしばらく、俺らは話さなかった。 何から話したらいいのか、それが分からなかった。 『なぁ。』 それを考えていると、山下に話しかけられた。 『どうして、あの日、この場所に来なかったんだ。』 山下が言ってるのは、五年前のこと。 五年前の今日、俺は山下と約束していた。 お互いにまだ友達だった。 『あの日、俺はここで待ってた。お前は、約束を破るやつじゃなかった。』 『そうだな。』 俺はそう言って隣に立った。 『来たかった。でも、来れなかった。』 『どういう意味だよ。』 そう言って山下は俺を見た。 『今は、言えない。』 『は??』 『というか、言う勇気がまだないんだ。』 『...。』 『ごめん。だから、別に俺のことは放っておいてくれていい。ただ、仁とはいつまでも、今のままでいてほしい。』 そう言って俺は山下に笑いかけた。 それからしばらく、俺は風景を見て、帰ろうと歩き出した。 『和也。』 そう言われて俺は振り向いた。 すると、山下はこちらに来て、俺の荷物を持った。 『相変わらず、仁に似てるな。』 『は??』 『でも、仁より心が優しい。』 黙っていると、山下はじっと俺を見た。 『俺はお前の優しさを知ってる。お前が言えないっていうからには、それなりの理由があるんだと、俺は思う。』 『うん。』 『和也。俺は嫌いじゃない。ただ、淋しいだけだ。』 そう言って山下は歩き出した。 『智。』 そう言うと、山下はこちらを見た。 『ただいま。』 そう言うと笑った。 『おかえり。』 それから俺らは、一緒に寮に帰った。
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